埼玉県皮膚科医会

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2021年「皮膚の日」市民公開講座(WEB開催)のご報告

今年もコロナに負けるな‼ スキンケア

 例年さいたま市内で行っていた市民公開講座ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年もWeb開催となり、お二人の先生方に予めご講演いただいた動画を10月1日~12月31日にYouTubeで配信しました。高山先生には「手荒れ・マスク荒れから皮膚を守ろう!正しい知識とスキンケア」というテーマで、また片桐先生には「治る!アトピー性皮膚炎の最新治療と患者歴60年の皮膚科医が伝える治療・生活のコツ」というテーマで講演をしていただき、たくさんの方にご視聴いただけましたこと、本当にありがとうございました。

「手荒れ・マスク荒れから皮膚を守ろう!正しい知識とスキンケア」

済生会川口総合病院 皮膚科主任部長 高山 かおる先生

はじめに
 コロナ禍、マスクによる皮膚トラブル、手指消毒による手荒れがふえています。皮膚の正しい知識とスキンケアで、健康な皮膚をまもりましょう。これらのトラブルは些細なことにおもえるかもしれませんが、皮膚のバリア機能異常を引き起こし、荒れた皮膚からの雑菌やウイルスの侵入をゆるしてしまいます。
1 . マスク荒れ
 長時間の着用でかゆみがでたり、にきびがひどくなったりなどの症状が増えています。
その 1  かゆみ
 マスクをしているとそのこすれる刺激から頬部やあごの部分に湿疹が起き痒みがでます。ある海外の研究によるとマスク着用の20%のひとが痒みを感じているということです((Acta DermVenereol. 2020 May 28; 100(10):adv00152. doi: 10.2340/00015555-3536.)。
その 2  ニキビ
 ニキビは毛穴の出口が角質の蓋(角栓)でつまってしまうことで、皮脂が皮膚の外に排泄されず炎症を起こすことで生じます。マスクをしていると角栓ができやすくなること、マスクが常にニキビのできている部分を触る刺激となり炎症を起こすことが原因と考えられます。
トラブル対策
 マスクの刺激をさけるために、話すために口を動かすときにマスクがうごいて擦れないようにする必要があります。マスクはある程度余裕のある大きさで、立体的な形のものを選ぶ。ひだがついているものはしっかりひろげて、自分の顔にあわせて着用する。耳にかかる部分はきつすぎないように紐やゴムの長さを調整します。なによりぴたっと顔の形にあったマスクをすることは感染対策そのものです。

2 . 手荒れ
手は洗いすぎと消毒薬による刺激のために皮膚炎を起こします。
その 1  手洗い
 手を洗うときにはよく洗剤を泡立て、泡を転がすように洗います。こすりすぎたり、洗剤を濃い濃度のまま使ったりすると手荒れの原因になります。感染対策の観点から頻繁に手を洗うことが増えていますが、手荒れがおこると、かえって細菌やウイルスが皮膚の中に入りやすくなるので注意が必要です。
その 2  消毒薬
 手指消毒薬は主にエタノールでできています。エタノールは殺菌作用の強さから推奨されてい
ますが、使用により皮膚は乾燥したり、刺激性の皮膚炎を生じたりします。
トラブル対策
 手を洗うときにはぬるま湯をつかい、よく水気をふきとり、そして洗浄後1FTUをまもった量の保湿薬でうるおすことが大切です。アトピー素因などをお持ちで手荒れのリスクの高いかたは、エタノー濃度の低い、もしくはエタノールフリーの消毒剤を使うといいと思います。手指消毒薬の中には保湿剤が含有されているものがありますので、なるべく手に優しいものを選択するようにしましょう。

さいごに
 皮膚のバリアは外界刺激や感染症からのバリア機能を担っています。正しいスキンケアでコロナ禍を乗り切るとともに、今後のスキンケアの参考になれば幸いです。

「治る!アトピー性皮膚炎の最新治療と患者歴60年の皮膚科医が伝える治療・生活のコツ」

獨協医科大学埼玉医療センター 皮膚科教授 片桐一元先生

 アトピー性皮膚炎は乳児から高齢者まで、幅広い年齢層に発症し、重症者では年余にわたり症状が持続します。治療は、ステロイド薬の外用が中心となりますが、それだけでは十分な効果が得られない患者や、一旦改善してもすぐに再燃を繰り返す患者も多いです。また、中には、ステロイド外用薬の副作用を心配するあまり、本来であれば軽症で維持できるはずが、重症になってしまう患者もいます。
 この講演では、アトピー性皮膚炎のことを一般の方にできるだけ正確に理解していただきたいと思いスライドを作成しましたYouTube視聴を前提に作成したものの、長くなってしまい、2 部(後半をさらに 2 分割)に分けることになりました。全般的に、一般の方には内容がやや難しいかもしれません。しかし、アトピー性皮膚炎の治療は、患者自身が自宅で、自分の症状に応じて自分で判断し、実施する必要があります。再燃を繰り返す中等症以上の患者には、どの様な疾患であるか理解し、皮膚症状をどの様に考え、どの治療を選ぶのか、が上手にできるようになっていただきたいと思っています。また、これは多くの医師、皮膚科医にも理解していただきたい基本的知識であり、治療に役立てていただきたいとの思いもあります。長くなり申し訳ありませ
んが、是非一度ご視聴いただきたいと思っています。
 第 1 部では、主に重症・難治の患者に向けて「治せる薬」として、3 年前に登場したデュピクセント®を筆頭に、オルミエント®、リンヴォック®を効果の高い治療薬として紹介するとともに、その作用点が、アトピー性皮膚炎の特徴である、「強いかゆみ」を抑えることにあることを示しました。また、アトピー性皮膚炎がどの様な疾患か(基本病態とアロネーシス:わずかな刺激で生じるかゆみ)と皮膚症状としての「湿疹」「痒疹」「乾燥肌」の見分け方、皮膚症状に応じた治療の選び方を提示しました。
 第 2 部では、ステロイド外用薬の副作用の正しい知識から始まり、具体的な外用療法、身の回りにある様々な悪化因子(掻破、衣類の刺激、温まることで痒くなる、汗、日光、季節変動、特に春に悪化しやすい、入浴習慣、かぶれ、ストレスなど)について、皮膚科医として、さらには、自分自身がアトピー性皮膚炎患者であることで身につけた治療や生活のコツを紹介させていただきました。
最後に、スライド用の資料をYouTubeに変換する作業をしていただいた国立病院機構埼玉病院、中捨克輝先生に深謝いたします。


ご視聴いただいた皆様方、本当にありがとうございました。

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