埼玉県皮膚科医会

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2012年「皮膚の日」 市民公開講座のご報告

アトピー性皮膚炎とスキンケア~気楽に皮膚科へ行こう~

2012年11月11日(日)に第3回「ひふの日」記念イベントをさいたま赤十字病院講堂(さいたま市中央区)で開催しました。曇り空の中、200名を超える皆様方にご来場いただき、大変盛況な会になりました。ご参加いただき誠にありがとうございました。お二人の先生によるアトピー性皮膚炎をテーマとした講演で会場は満員となり、時にメモを取りながら、熱心に話を聞いている方も多かったのが印象的でした。



皮膚のトラブル相談コーナー

講演に先立ちまして、「皮膚のトラブル相談コーナー」が設けられ、12名の皮膚科医がご来場の皆様の皮膚に関する疑問や質問を受けました。相談された方は64名と多く、1時間の制限時間内では終わらないほどでした。







「開会の挨拶」

埼玉県皮膚科医会会長・仲皮フ科クリニック院長 仲 弥 先生

 皮膚の役割はいろいろありますが、中でも大事といわれているのが『バリア機能』です。つまり、皮膚は、外から化学物質や細菌が身体の中に勝手に入らないようにしたり、体の中の水分が外に逃げないようにしたり、バリアとしての役割をはたしています。お風呂で肌をゴシゴシ洗う方がいますが、これは決して良くありません。激しく皮膚をこすると、このバリア機能が崩れて、かえって皮膚病のもとになってしまうからです。今日はアトピー性皮膚炎についてお二人の先生方からお話を伺いますが、アトピー性皮膚炎にはもともとこのバリア機能に異常がある方が多いと言われています。ですから、このバリア機能をふだんから補ってあげる必要があります。それには日常のスキンケアが非常に大切です。でも最近、アトピーやスキンケアについてのいろいろな情報が氾濫していますので、何が正しくて何が間違っているのかわからないという方も多いかと思います。そういった意味でも、今日の講演会をお聞きいただいて、皆様が正しい知識をお持ち帰りいただければ何よりと考えております。 皮膚の役割はいろいろありますが、中でも大事といわれているのが『バリア機能』です。つまり、皮膚は、外から化学物質や細菌が身体の中に勝手に入らないようにしたり、体の中の水分が外に逃げないようにしたり、バリアとしての役割をはたしています。お風呂で肌をゴシゴシ洗う方がいますが、これは決して良くありません。激しく皮膚をこすると、このバリア機能が崩れて、かえって皮膚病のもとになってしまうからです今日はアトピー性皮膚炎についてお二人の先生方からお話を伺いますが、アトピー性皮膚炎にはもともとこのバリア機能に異常がある方が多いと言われています。ですから、このバリア機能をふだんから補ってあげる必要があります。それには日常のスキンケアが非常に大切です。でも最近、アトピーやスキンケアについてのいろいろな情報が氾濫していますので、何が正しくて何が間違っているのかわからないという方も多いかと思います。そういった意味でも、今日の講演会をお聞きいただいて、皆様が正しい知識をお持ち帰りいただければ何よりと考えております。

 「アトピー性皮膚炎はここまでわかった」

埼玉医科大学皮膚科教授 中村晃一郎先生

アトピー性皮膚炎は小児の約10%が罹患する日常頻度の高いアレルギー皮膚疾患です。かゆみによるそう破が皮膚炎を悪化させ、日常生活に支障をきたすことも稀ではありません。
皮膚炎の治療の基本は、①皮膚炎が落ち着いている時には、十分なスキンケアを行うこと、②皮膚に赤みが強くなり、かゆみが悪化する場合には、赤い発疹のある場所に副腎皮質ホルモン軟膏(ステロイド軟膏)を使用すること、③アレルゲンが特定できる場合にはアレルゲンの除去を行うことです。このなかで、スキンケアを続けながら、皮膚を良い状態に保つことが、快適な日常生活をすごすことにつながり、治療の目標(ゴール)となります。もともとアトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚では、皮膚の表面にある角層の水分の量が低下しています。皮膚から外界への水分の蒸散量が高くなっており、これが皮膚の乾燥をもたらします。小児期はとくに皮膚の乾燥が強くなる時期ですので、この時期に、アトピー性皮膚炎では、皮膚の乾燥による発疹やかゆみが増加する傾向があります。また、乾燥した皮膚では外界からのほこりや異物が皮膚に侵入しやすい性質があります。皮膚に保湿薬などの軟膏を十分に使用することは、皮膚の乾燥をおさえ、同時にかゆみや発疹の出現を抑えることになりなります。とくに入浴後の皮膚は水分を含んでおり、軟膏の皮膚への浸透性も増しますので、この時期(入浴後30分以内)に保湿薬を使用することはとても効果があります。このように皮膚炎が落ち着いている時に、保湿薬を外用することによって、皮膚の乾燥を改善するスキンケアがとても大切です。また、アトピー性皮膚炎の患者さんは、しばしば汗やほこりによってかゆみが増すことがあります。したがって、入浴によってこれらの汚れをとることも大切です。この際、石鹸などを使用し十分に皮膚の汚れをとることは、大切です。さらに、低刺激性、乾燥肌用の石鹸などは、皮膚の脂(皮脂)を残すことができるので有意義です。入浴時の注意としては、爪で皮膚を掻かない、タオルなどで皮膚をつよくこすらないことなどです。やわらかく石鹸をつけて皮膚の汚れを取ることに留意します。さらに入浴から出たら、すぐに保湿薬を使用するように心がけましょう。赤みが強くなり、ぶつぶつや固い赤みが出るなど、皮膚炎が悪化した場合には、ステロイド軟膏の適応となります。この場合には医師の指示に従って、ステロイド軟膏による外用療法が必要となります。日常生活ではこのような外用療法、スキンケアを行うことによって、皮膚炎の悪化を防ぐことが可能となり、長い良好な皮膚のコントロールによって、かゆみのない快適な日常生活を過ごすことが可能となります。 

「アトピー性皮膚炎の治療とスキンケア — ステロイド外用剤のウソ、ホント&痒くない衣類の選び方」

獨協医科大学越谷病院皮膚科教授 片桐一元先生

 

 

 

 

 

湿疹を治療して悪循環をとめることが大切です
アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥、強いかゆみ、繰り返す湿疹が特徴です。アレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくを合併することも多く、以前は、これらの症状がどうして一緒に起きるのかが分かっていませんでした。最近の研究により、これらはお互いに密接な関係があることが明らかとなり、病気の全体像が分かりやすくなりました。皮膚の乾燥(バリア機能異常)が皮膚や喘息などのアレルギーを起こしやすくし、また、アレルギー(湿疹)が皮膚のバリア機能を悪くする『悪循環』が病気を治りにくくさせているようです。治療するばあいにはこの『悪循環』を止める必要があり、その中でも最も影響の強い湿疹を治療することが大切です。
誤解されているステロイド外用薬の副作用:『内臓が悪くなる』『色が黒くなる』
湿疹の治療の中心はステロイド外用薬ですが、副作用を怖がりすぎて、あるいは、思い込みなどで間違った使い方をしている患者さんをしばしば見かけます。副作用に関する誤解で最も多いのが『内臓が悪くなる』ですが、ステロイド内服治療に比べると大量に外用しても軽度の副作用であり、次第に外用量を減らすことを考えると心配はいりません。また、『色が黒くなる』こともないので、安心して使用してください。但し、長期に外用する場合には『皮膚が薄くなる』副作用は避けられません。
間違った外用方法
使用法の間違いでは、1.弱すぎる外用薬の選択、2.外用量が少ない、3.擦り込みすぎる、4.早くやめすぎる、5.湿疹を保湿剤で治療しようとする、などが多いと思います。実際の治療では最も大切なことであり、1.に対しては症状によっては顔にも強い薬を使う必要があり、2.3.に対してはフィンガーチップユニットを基本に外用量を考える、4.5.には湿疹か単なる乾燥かを判断するには優しく手で撫でて、ブツブツがなくなることを目安にする、などが対策となります。このような外用療法の正確な知識を学ぶために皮膚科を受診すると思ってください。
痒くない衣類の選び方
一般には、硬い、凹凸のある生地では摩擦により、毛羽立ち、起毛がある場合は痒みを引き起こし、保湿効果がなければ乾燥し、暖まりすぎる服も痒くなります。衣類によっては皮膚を刺激し、痒みが生じることがあることを知ることが大切です。
最後に
アトピー性皮膚炎は治りにくい病気ですが、上手に対処すれば通常の生活には支障はありません。掻き過ぎやシャンプーによるかぶれなど、明らかな悪化因子を知り、少しでも避けるようにしつつ、正しい治療を行い、重症化しないようにすることが大切です。たまに着るおしゃれな服が刺激になっても、その後にしっかり治療すればよいのです。病気と上手につきあいながら楽しく暮らしてほしいと思います。そのために皮膚科医を上手に利用してください。


司会(仲先生)
今日はアトピー性皮膚炎についてお二人の先生にお話をしていただきましたが、この講演会を通じて、皆様が皮膚についての正しい知識を少しでも多くお持ちいただけたものと思います。
先程のお話にもございましたように、アトピー性皮膚炎は遺伝的要素も含んださまざまな原因が重なりあって起こる皮膚の病気であり、現時点では病気そのものを根治させる治療法はありません。ですから、治療の目標は完治ではなく、高血圧や糖尿病と同じように、皮膚の症状を良い状態にコントロールすること、日常生活にあまり差し障りのない状態に保つこと、これを目指して治療を続けることが重要だと思います。
そういった意味で、アトピー性皮膚炎の方は皮膚科専門医に相談していただき、アトピー性皮膚炎と上手に付き合っていただきたいと思います。

スキンケア製品の展示と説明

講演の合間の休憩時間には協賛企業のスタッフからスキンケア製品の展示と説明があり、来場者の方は熱心に聞き入っていました。また、業者の方にとっても一般の方と話をする機会が持てて大変有意義だったとのことです。











また、講演後にはスキンケア製品の豪華なお土産をお持ち帰りいただきました。







来場者の皆様も満足して帰途につかれました。

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