埼玉県皮膚科医会

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2011年「皮膚の日」 市民公開講座のご報告

ニキビと皮膚がん ~気楽に皮膚科へ行こう~

 11月12日は「いい皮膚の日」として記念日協会に登録されています。毎年この時期には全国各地で、一般の方々を対象に講演会や相談会が多数開催されています。埼玉県も遅ればせながら、昨年から企画させていただきました。そのときに参加された皆様方から「大変有意義な会だった、これからも続けてほしい」というお声をたくさんいただきましたので、今年も企画させていただいた次第です。

去る11月6日(日)に第2回「ひふの日」記念イベントをさいたま赤十字病院講堂(さいたま市中央区)で開催しました。小雨の降る中、たくさんの皆様方にご来場いただき、誠にありがとうございました。

 

皮膚のトラブル相談コーナー

講演に先立ちまして、「皮膚のトラブル相談コーナー」が設けられ、8名の皮膚科医がご来場の皆様の皮膚に関する疑問や質問を受けました。相談された方は53名と昨年よりかなり多く、盛況でした。ひとりひとり仕切られた特設ブースで、日頃の皮膚に関する悩みを相談されました。





「開会の挨拶」

埼玉県皮膚科医会会長・仲皮フ科クリニック院長 仲 弥 先生

今日はニキビと皮膚がんについてお話を伺いますが、ニキビはほとんどの方が経験するせいでしょうか、皮膚病という認識が薄く、どちらかというと軽視されがちだと思います。でも、ニキビはれっきとした皮膚病で尋常性座瘡という病名もついています。たかがニキビと思われがちですが、放っておいてひどくするとニキビ跡が一生残ってしまうこともあります。これを防ぐために正しいスキンケアが必要です。

また最近原発事故で放射線による発がんの問題が騒がれていますが、放射線だけでなく紫外線も皮膚がんの原因にもなりますので、適切な防御とスキンケアを行う必要があります。

今日はニキビと皮膚がんについてお二人の先生方からみなさまのお役に立つ話が色々と聞けると思います。ぜひ日常のスキンケアの参考にして下さい。そして、今日の講演会を通じて、皆様が皮膚に関する正しい知識をお持ちいただければと考えております。

「ニキビとスキンケア」

さいたま赤十字病院皮膚科副部長 成田多恵先生

にきびは昔は「青春のシンボル」と言われ、にきびで病院を受診するのはとんでもないと考えられていましたが、実は昔から「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という病名のついている皮膚病です。にきびが治りにくい場合には、(1)正確な診断をうける(2)原因を明らかにする(3)症状にあった治療をうける(4)適切なスキンケアを行うために、ぜひ皮膚科専門医を受診しましょう。

 にきびの症状は、白ニキビ、赤ニキビ、黒ニキビ、面疔などと様々です。原因は様々(ストレス、不規則な生活、便秘、不適切なスキンケア、生理不順など)でなかなか特定しにくいです。ひどくなるとニキビ痕を残してしまうこともあります。にきびだと思っていても、実は湿疹やかぶれ、アトピーなどの別の皮膚病のこともあり、その逆で湿疹と思っていても実はにきびということがよくあります。間違った治療で症状を悪化させないためにも、早期の皮膚科専門医の治療をお勧めします。

 にきびの治療は、2008年に日本皮膚科学会でガイドラインが作られ、効果的な治療がすすめられています。主に、レチノイドと抗菌薬の飲み薬、塗り薬が最も効果的とされていますが、そのほかにも皮膚科専門医では患者さんの状態や症状によって他の治療との組み合わせで治療していきます。

 にきびのスキンケアは、洗顔が最も大切ですが、やりすぎもよくありません。石けんをよく泡立てて、やさしく顔全体を洗いましょう。すすぎ残しもにきびの原因になりますので、特にあごや生え際の部分はすすぎ残ししやすいのでしっかり洗いましょう。レチノイドの治療を行う場合には、ほとんどの患者さんで皮膚がカサカサ、ヒリヒリしますが、継続して治療を行うためには保湿をしっかり行うことが大切です。他にも皮膚の老化を防ぐために紫外線対策も必要です。皮膚科専門医では、適切なスキンケアのアドバイスを行います。

 にきびの治療は、皮膚科専門医と一緒に継続して根気よく続けていくことが大事です。にきびは保険で治療ができますが、時には患者さんのライフスタイルにあわせて保険外診療(ピーリング、レーザー治療)を選択することもあります。治療の希望がありましたら、皮膚科専門医にぜひご相談ください。

「知っておこう、正しい皮膚がんの知識」

埼玉医大国際医療センター皮膚腫瘍科・皮膚科教授 山本明史先生

皮膚がんは皮膚の細胞が悪性化して無秩序に増殖し、ついには内臓にまで転移をおこして生命にかかわってくる病気です。皮膚の細胞と言っても多種類の細胞からできていますので、その皮膚がんの種類も多種類におよび、それぞれ特徴があります。我が国の皮膚がんの発生頻度は、年間人口10万人に対して数人程度の発生で、決して多くはないですが、年間千数百人の方が皮膚がんで死亡されている現状から、やはり注意が必要です。皮膚がんは通常抗がん剤など薬が効きにくいがんですので、基本的に早く手術で取り去ることが、治るための一番確実な手段です。

 最も発生が多い皮膚がんは、基底細胞がんです。これは顔面など紫外線をよく浴びる部位に黒色のかたまりや潰瘍として発生してきます。診断にはダーモスコピーという拡大鏡検査が役に立ちます。このがんは内臓にまで転移することはきわめてまれで、命の危険性はまず考えられないのですが、放っておくと、深く増殖していくため、眼や鼻がつぶれてしまうことがあり、早めに手術を受け、取り去ることが重要です。ほとんど顔面に発生してくるため、手術で完全に取り去ったあとも、美容的にきれいに治すことに努力しています。

 第二に発生が多い皮膚がんは、有棘細胞がんです。この皮膚がんは、発生しやすい状態(母地)や、前段階の病気がわかっている場合があります。そのうち、もっとも多いものは、日光角化症です。長年紫外線を受けたおもに顔面に、かさぶたのような角化性のできものが発生してきます。農業や漁業に長年従事していたり、日焼け止めを使用しないで長年野外でズポーツを続けてこられた人に発生することが多いです。放っておくと進行して有棘細胞がんになりますので、日光角化症のうちに手術で取り去ることが必要です。次に発生しやすい状態(母地)は、やけどのあと(痕)や放射線を受けた皮膚です。子供の頃にやけどを受けてあとになっている皮膚に、中年以降になって異常なできものや潰瘍ができてくれば、病院を受診したほうがいいです。

第三に発生が多い皮膚がんは、ほくろのがんとも呼ばれる悪性黒色腫(メラノーマ)で、転移することが早く治療が効きにくく、皮膚がんのうちで最も死亡数が多いがんです。足のうらに最も多く発生し、約3割を占めますが、全身どこの皮膚にでも発生する可能性があり、足のうら以外の皮膚も注意が必要です。ほくろに注意する場合、1)形がいびつ2)まわりがギザギザしている3)色のムラがある4)大きさが6mm以上ある、このようなほくろに気づいた場合一度皮膚科の専門医に診てもらった方が賢明です。ここでも診断にはダーモスコピーという拡大鏡検査が役に立ちます。また、当院のような専門病院では、リンパ節転移をいち早く発見するセンチネルリンパ節生検という最新の検査が保険適応で行われています。

 その他、高齢者に発生が多い、乳房外(陰部)パジェット病や頭部血管肉腫の出現にも注意が必要です。

 何か皮膚がんではないかと心配になったときは、近くの皮膚科専門医を受診し、その疑いがあると診断された場合は、当院のような専門病院に紹介を受けて最良の治療を受けてください。


司会(仲先生)

今日はニキビと皮膚がんについてお二人の先生にお話をしていただきましたが、この講演会を通じて、皆様が皮膚についての正しい知識を少しでも多くお持ちいただけたものと思います。

先程のお話にもございましたように、ニキビがひどくなると跡が残りますので、そうならないためにも、早目にニキビの正しいケア、正しい治療を行う必要があります。

また皮膚がんにもいろいろあり、紛らわしい病気もたくさんあります。ですから、まずは皮膚科医による正しい診断を受ける必要があります。そのためにも、皮膚の病気が少しでも気になりましたら、皮膚科専門医に相談していただきたいと思います。

スキンケア製品の展示と説明

講演の合間の休憩時間には協賛企業のスタッフからスキンケア製品の展示と説明があり、来場者の方も熱心に聞き入っていました。

 

また、講演後にはスキンケア製品の豪華なお土産をお持ち帰りいただきました。

来場者の皆様も満足して帰途につかれました。

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