2015年「皮膚の日」市民公開講座のご報告
つま先まですこやかに
2015年11月8日(日)に第6回「ひふの日」市民公開講座をさいたま赤十字病院講堂(さいたま市中央区)で開催しました。雨空の中、約250名の皆様方にご来場いただき、大変盛況な会になりました。ご参加いただき誠にありがとうございました。会場はお二人の先生による熱の入ったご講演と皆様を交えた質疑応答で熱気にあふれていました。
今回は事前に多数のお申込みをいただきましたが、会場スペースの関係で、全員に入場整理券をお渡しすることができませんでした。興味を持ってお申込みをいただきましたのに、本当に申し訳ございませんでした。なお、次回は2016年11月13日(日)に「市民会館うらわ」(478名入るホール)で開催予定です。
今回は事前に多数のお申込みをいただきましたが、会場スペースの関係で、全員に入場整理券をお渡しすることができませんでした。興味を持ってお申込みをいただきましたのに、本当に申し訳ございませんでした。なお、次回は2016年11月13日(日)に「市民会館うらわ」(478名入るホール)で開催予定です。
お肌のトラブル相談
講演に先立ちまして、「お肌のトラブル相談」が特別ブースで行われ、14名の皮膚科医がご来場の皆様の肌・髪・爪等に関する疑問や質問を受けました。相談された方は81名(13~95歳)と年々増加しています。相談内容としては湿疹・皮膚炎の他に、今回は講演の演題に興味を持って来場された方が多いためか、タコ・ウオノメや巻き爪につての相談が多かったようです。
「開会の挨拶」
埼玉県皮膚科医会会長・仲皮フ科クリニック院長 仲 弥 先生
本日のテーマは「つま先まですこやかに」です。今日ご来場の皆さんの中には、「足が痛い」とか、「足が痒い」という方もおられると思います。足が痛いと、つい歩くのがおっくうになりますし、外出の機会も減ります。そうすると腰から下の筋肉が衰えてしまします。よく「老化は足からはじまる」と言われますが、実際、足に湿疹ができたり、タコやウオノメができたために、筋肉が衰えて、転びやすくなったり、家に閉じこもりがちになったりするケースがあります。そうならないようにするためにも、足を常に健康にしておくということが大切です。
そこで今日は、「頭のてっぺんからつま先まですこやかな皮膚を保つにはどうしたらよいか」、お二人のエキスパートの先生方からお話を伺います。そして、お話をお聞きいただいて、皆様が正しい知識をお持ち帰りいただければ何よりと考えております。
「アトピー性皮膚炎の治療とスキンケア」
埼玉医科大学皮膚科教授 土田哲也先生
アトピー性皮膚炎を理解するためのキーワードは「乾燥肌」と「アレルギー」です。アトピー性皮膚炎は身近で慢性の疾患であるがゆえに、様々な「常識」がささやかれ耳に入ってくると思います。そういった常識は本当に正しいのかどうか、この講演で一緒に検証していきましょう。
アトピー性皮膚炎を考える前に、まず、アトピー性皮膚炎と蕁麻疹、接触皮膚炎との関係を整理しておく必要があります。アトピー性皮膚炎で最も誤解が多いのは、そのアレルギー的側面です。アトピー性皮膚炎のアレルギー性炎症は、次の二つのアレルギー性皮膚疾患とは機序が異なるという理解がまず必要です;1)IgE抗体が主役で即時型アレルギーにより生じるアレルギー性蕁麻疹(代表は食物アレルギー。ただし、慢性蕁麻疹はこのタイプの蕁麻疹ではありません)、2)Tリンパ球が主役で遅延型アレルギーにより生じるアレルギー性接触皮膚炎。
アトピー性皮膚炎は単にアレルギーだけで生じる疾患ではなく、その根底には乾燥肌があると考えられます。乾燥肌は皮膚のバリア機能の弱さに繋がるため、様々な物質が皮膚を通して入り、即時型とも遅延型ともいえないアレルギー性炎症を生じやすくなります。乾燥肌、アレルギー性炎症の生じやすさは、素質に基づきますが、そういった遺伝的素因があるから、一生治らない難病であるというのは大きな間違いです。皮膚のバリア機能や反応の起こりやすさも年齢とともに変化していきますので、自然によくなっていくことが期待できる疾患です。ただし、自然に落ち着くまで、乾燥肌およびアレルギー性炎症に対してきっちりとした治療を行い良い状態を保つことが、合併症などを防ぐためにも大切です。
アトピー性皮膚炎において問題となる合併症として、バリアが弱いために皮膚から入ってくる感染症、および痒くて擦ったりして生じる白内障などの眼症状があります。これらの対策も必要です。
アトピー性皮膚炎の起こりかたを理解すれば、治療法の中心は、乾燥と炎症対策であることがおわかりいただけると思います。さらに、これらの結果生じる「痒み」という謎めいた感覚への対応も必要になります。どんな薬にも副作用はあります。大事なことは、その副作用はどういうものかを知ってうまく使っていくことです。アトピー性皮膚炎の治療は、先入観なしに病態に基づいて考えれば、自ずから目指すゴールがみえてきます。
「足や爪が痛むわけ―タコ・巻き爪ができる理由と対策」
済生会川口総合病院皮膚科部長 高山かおる先生
私達の身体は206個の骨でできており、「足」は片足28個の骨が上手に組み合わさって「動く」ということをしています。その足が痛むという理由について考えてみます。
関節が痛い、足の裏を踏みしめると痛いという整形外科的な問題を抱えている場合も多いですが、実はタコが痛い、爪が痛いということで足に悩んでいる方も大変多くいらっしゃいます。痛みというのは体を危険から守るシグナルとして発せられています。つまり痛みのある部分は体へ危険を知らせていると考えることができ、爪やタコが痛むということは体にトラブルが起きていると知らせているということになります。
爪が痛む理由は二つあります。一つは爪が短いために食い込む陥入爪(かんにゅうそう)、もう一つは爪が巻くための巻き爪(巻き爪)です。陥入爪は爪の切り方が短すぎるために生じます。巻き爪は爪の短い状態を繰り返した結果や、合わない靴などによる外力、外反母趾の変形、親指にしっかり体重をかけないという理由で起きてきます。タコは合わない靴を履くことによって足が靴の中で滑るために擦れたり、逆に靴底を握りしめるような恰好になったりすることで生じます。また足の関節が変形した結果、いろんな部位が突出して当たりやすくなり、さらに指や足の関節の動きがとても悪くなってしまった結果として生じているときもあります。足が変形しているということは、足の上の関節である膝、股関節、骨盤、腰、背骨、肩甲骨、首に影響を及ぼします。単純に骨を積み木だと考えると、下の方で左に1cmずれたらその上で右に1cmずらさないとまっすぐに立っていることができません。足にトラブルがある方はひざと股関節の使い方に問題があることが多いのです。言い換えると爪やタコが治らないということは、足に関節変形があり、その人は関節の使い方に問題があると言い換えることができるのです。
では対策として有効なものはなにかというと、足のケア、適切な靴を履く、ほぐしの3つを行うトータルフットケアです。足のケアとは、爪を正しい形に切ること、保湿・保清をすることで、すぐにでも習慣に取り入れることができます。適切な靴を選ぶことは実は簡単ではありません。まずは自分の足のサイズを靴屋さんで計測してもらって、どんなタイプの靴が合うかをアドバイスしてもらうといいでしょう、かかとの部分がしっかりとしていて、紐やバンドがついているものを選びましょう。つま先は余裕があって指を動かすスペースのあるものが望ましいです。ほぐしはお風呂などに入ったときに足の指でグー、チョキ、パーなどをおこなってほぐしたり、足首を回してほぐしたり、ゴルフボールを踏んだり持ち上げたりして行うことができます。
足の健康を保ち、自分の足で歩き続ける生涯をおくるために、ご自分の足をいつくしむということを始めていただきたいと思います。
司会(仲先生)
今日はお二人の先生にお話をしていただきましたが、この講演会を通じて、皆様が皮膚についての正しい知識を少しでも多くお持ちいただけたものと思います。
そして、頭から足の先まで皮膚のトラブルを防ぐために重要なのは何といっても「普段のスキンケア」だということが理解していただけたと思います。また、足が痛いと、腰から下の筋肉も衰えてしまいます。そうしますと、特に高齢者では道で転倒したり、家に閉じこもってしまうことになります。ですから、足の痛みは放っておかずに、早めの手当てが必要です。そして、いつまでもご自分の足でピンピン歩けるように、ぜひ日頃からフットケアを含めたスキンケアを心がけていただきたいと思います。
スキンケア製品の展示と説明
講演の合間の休憩時間には協賛企業のスタッフからスキンケア製品の展示と説明があり、来場者の方は熱心に聞き入っていました。また、業者の方にとっても一般の方と話をする機会が持てて大変有意義だったとのことです。
また、講演後にはスキンケア製品の豪華なお土産をお持ち帰りいただきました。
来場者の皆様も満足して帰途につかれました。