埼玉県皮膚科医会

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2023年「皮膚の日」市民公開講座のご報告

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2019年から昨年までWEB開催となっていた市民公開講座ですが、本年は埼玉会館小ホールにおいて4年ぶりの会場での開催となり、お二人の先生にご講演いただきました。高村さおり先生には「正しく知ろう!アトピー性皮膚炎との上手な向き合い方」というテーマで、また前川武雄先生には「足のむくみ、かゆみ、湿疹や傷~下肢静脈瘤ってどんな病気?どんな治療するの?」というテーマで講演をしていただき、たくさんの方にご聴講いただけました。

「正しく知ろう!アトピー性皮膚炎との上手な向き合い方」

埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 高村さおり 先生

1. アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、アレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人にみられる皮膚の炎症をともなう病気です。主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。生後2~3ヵ月頃より発症し、10歳以上になると自然に軽くなり、ほとんど治ってしまう人も多いのですが、最近では大人になっても症状が残ってしまう人も増えてきました。

2. アトピー素因とは
アトピー素因とは、遺伝性に持っているアレルギーの原因物質(ダニ、スギ花粉など)に過敏症を起こしやすい体質で、喘息や花粉症がその代表です。

3. 皮膚素因とは
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は、皮膚表面の脂の膜や、角質細胞の間の脂が減って水分を貯えられなくなっています。この乾燥状態は、外界からの刺激を防ぐバリア機能を弱め、皮膚での炎症が簡単に生じることにつながっています。

4. 病気の起こり方
アトピー性皮膚炎は、乾燥しバリア機能が低下し、炎症を起こしやすくなっている皮膚に、汗、ほこり、摩擦などの外からの刺激が加わって起こります。

5. 治療は
アトピー性皮膚炎の炎症をおさえる薬としてはステロイドのつけ薬が効果的です。ステロイドではないカルシニューリン阻害、ヤヌスキナーゼ阻害、ホスホジエステラーゼ阻害のつけ薬も使われています。つけ薬ではどうしてもよくならない場合には、シクロスポリンやヤヌスキナーゼという過剰に働いている免疫を抑えるのみ薬、紫外線療法、注射(生物学的製剤)も使うことがあります。皮膚科医に相談してみてください。

6. 日常生活で気をつけることは
生活リズムを規則正しくし、清潔に保つために掃除を十分に行うことは大切です。乾燥肌の方に推奨されるお風呂の温度は、38~40度。5~10分程度を目安に浴槽につかりましょう。石鹸はよく泡立てて、よくすすぐこと。入浴後には保湿成分を補うこと。つけ薬は人差し指の先から第一関節までの分量を1単位と考え、手のひら2枚分の範囲にしっかり塗ることが大切です。衣類はチクチクしたものは避け、柔らかい素材のものを選んでください。

7. アトピー性皮膚炎と上手に向き合う
軽い症状の方は治ることも多いのですが、一部の重症な方では、日常生活にあまり差し障りのない状態に保つことを目標と考えて必要な治療を十分に行っていくと、ずっと楽に向きあっていけます。適切な治療で身も心も楽にしてあげてください。

「足のむくみ、かゆみ、湿疹や傷~下肢静脈瘤ってどんな病気?どんな治療するの?」

自治医科大学附属さいたま医療センター皮膚科 前川武雄 先生

 足のむくみは、様々な原因でおこります。心臓や腎臓など内臓の病気が原因で生じることもあれば、下肢静脈瘤やリンパ浮腫など血液やリンパの流れが悪くなった結果、むくみが生じることもあります。本日は、その中で下肢静脈瘤について詳しくお話し致します。
人間の血管は大きく動脈と静脈に分けられます。動脈は血液が心臓から送り出される血管で、静脈は血液が心臓に戻るための血管です。下肢の静脈は足先から下腿を通り、大腿を通って、心臓方向に流れています。その際、重力に逆らって上向きに流れなければならないため、血液が逆流しないために、静脈弁という蓋が血管の中にあり、逆流しない構造をしています。しかし、加齢、立ち仕事、妊娠など、様々な原因で弁が障害されてしまうことがあり、弁の機能が失われると、重力により血液が上から下に逆流し、静脈が太く浮き出てきてしまいます。これが下肢静脈瘤の最も基本的な症状です。下肢静脈瘤の症状は多彩で、静脈が浮き出るだけでなく、足の重さやだるさ、むくみ、こむら返り、痛み、痒み、湿疹、色素沈着、皮膚潰瘍(傷)など、血液の逆流量や罹病期間などに応じて、様々な症状が出現するようになります。
 原因が静脈弁の障害ですから、飲み薬や塗り薬を塗ってもその効果は限定的です。治療の基本は、弾性包帯や弾性ストッキングを用いた圧迫療法と、逆流する静脈の流れを止める血管内治療が主体になります。圧迫療法は少しきつめの包帯やストッキングを着用することにより、膨らんでしまった静脈を圧迫し、血液が心臓に戻りやすくなるようアシストする治療です。その効果は非常に高く、適切な圧迫療法を継続すれば、各症状を大きく改善させることが分かっています。しかし、圧迫している間しか効果がなく、やめてしまうと元に戻ってしまいます。一方、永久的な効果が期待できる治療としては血管内治療があります。血管内治療にはレーザーや高周波で血管内を焼灼して逆流を止める治療や、血管内を医療用接着剤で閉塞させる治療などがあり、手術前後に圧迫療法と併用することにより、軽症であれば完治も目指すことができる治療です。治療の適応については、色々と条件もありますので、全員が受けられる治療ではありませんが、適応のある方には非常に有効性の高い治療法です。
 下肢静脈瘤について心あたりのある方は、専門医療機関の受診をおすすめ致します。


ご聴講いただいた皆様方、本当にありがとうございました。

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