埼玉県皮膚科医会

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2018年「皮膚の日」市民公開講座のご報告

うつる病気のウソ、ホント~正しく知ってスキンケア~

2018年11月11日(日)に第9回「皮膚の日」市民公開講座を「さいたま市民会館うらわ」(さいたま市浦和区)で開催しました。心配されていたお天気も上々の中、多数の市民の方々にご来場いただき盛況に終わることができました。

 

お肌のトラブル相談

講演に先立ちまして、「お肌のトラブル相談」がさいたま市民会館うらわの1階の会議室で行われ、12時45分から15時20分まで、10名の皮膚科医がご来場の皆様の肌・髪・爪等に関する疑問や質問を受けました。相談者は66人で、相談対象者は 72人(70歳代が最多)でした。相談内容としては湿疹・皮膚炎の他に、今回は講演会のテーマである、いぼや白癬についての相談が多かったようです。

「開会の挨拶」

埼玉県皮膚科医会会長・仲皮フ科クリニック院長 仲 弥 先生

今日皆様方に聞いていただくのはうつる病気の代表、イボと水虫です。でも、このイボと水虫、どちらも正式な病名ではなく、俗称です。皆様が日常よく口にする言葉ですが、実際にはどういう病気か正しく知っている方は少ないようです。一口にイボとか水虫といっても、その中にはいろいろな病気が含まれていますし、似ているけど全く違う病気もあります。それぞれ治療法も予防のためのスキンケアも異なります。最近はいろいろな情報が氾濫していて、何が正しくて何が間違っているのかわからないという方も多いかと思います。自己診断で誤った治療をしたばかりに、重篤な事態を招いてしまったという患者さんもおられます。ですから、「たかがイボ」、「たかが水虫」などと思わず、今日のお話をしっかり聞いて、正しい知識をお持ち帰り頂きたいと思います。

 

「いぼってうつるの? ~たこや魚の目との違いは~」

自治医大さいたま医療センター皮膚科准教授 川瀬正昭先生

 某製薬会社のウイルス感染が原因で起きるいぼにしか効果が望めない市販の服用薬の広告に、加齢によるいぼにも効くような写真を使い大問題になった。「いぼ」は皮膚から盛り上がっている小さなできもの一般を指す俗語である。患者さんが「いぼ」ができたと言って受診されると様々な異なる皮膚病が含まれる。皮膚科医がいう「いぼ」は「ウイルスが感染してできるいぼ」で、専門用語でウイルス性疣贅(ゆうぜい)と呼ばれる。病名に「いぼ」の名前が入るものには、俗語と専門用語で書くと、みずいぼは伝染性軟属腫、中年いぼはスキンタッグ・アクロコルドン、年寄りいぼは老人性疣贅あるいは脂漏性角化症となる。「いぼ」はヒト乳頭腫ウイルス(Human papillomavirus: HPV)が正常の皮膚にうつるわけではなく、微小な傷からはいり幹細胞に感染することで、表皮や、粘膜につくられる。髭剃りの刃や掻破によっても伝搬する。HPVによるいぼは、皮膚を中心にうつる尋常性疣贅、扁平疣贅、ミルメシア、色素性疣贅、粘膜を中心にうつる尖圭コンジローマ、ボーエン様丘疹症などがある。角質が真皮に陥入してきて痛い魚の目(鶏眼)や角質が厚くなるたこ(胼胝)とは異なり、いぼは削るとライト付き拡大鏡の1種であるダーモスコピーで点状出血が観察できる。いぼの治療としては、外来では角質を除去する削りと液体窒素が基本であるが、子供は痛くないビタミンD3他(保険適用外)なども使って治療をしている。長い間いぼに対する新しい治療がないため、治療期間を短縮するために難治ないぼには、私は外科的治療法であるいぼ剥ぎ法を積極的に導入している。また3か月で改善しなければ別な治療法へ順次変更している。治療の際には必ずダーモスコピーでいぼの残存を確認している。2007年に世界中の人が目を疑ったツリーマンことデデ・コサワさんは免疫異常を伴ってHPVが感染する疣贅状表皮発育異常症という病気でありました。最後に番外編としていぼ地蔵をとりあげた。埼玉では33か所存在する。 また日本皮膚科学会のホームぺージにも市民向けにかかれた皮膚科Q&Aのなかに江川清文先生がいぼについて書かれていることを示した。最後になりましたが皆様のご清聴に感謝いたします。いぼになったらまずお近くの開業されている皮膚科専門医の先生のところへ、難治な場合は紹介状をもらって当科へいらしてください。

「水虫(足白癬、爪白癬)について~治療と予防はどうしたらいいの?~」

順天堂大学特任教授、比留間医院・副院長 比留間政太郎先生

 ヒトは、無数の水虫菌に囲まれて生活しています。そして、菌は角層を溶かして侵入し感染します。ただ、初期は角層が少しむける程度で、目立った症状はありません(潜在的足白癬)。しかし、梅雨時期や様々な悪化因子が加わると菌は増殖し、それに伴い皮膚が菌を排除しようと免疫・アレルギー反応(発赤、小水疱、落屑、瘙痒)が生じます(水虫の急性期)。この反応は菌に対する防御反応ですが、かえって細菌感染やかぶれを起こし易い時期でもあります。水虫はこの急性期に適切な治療をすることが大切です。しかし、この時期を放置すると、小水疱型や趾間びらん型足白癬などとなり菌は角層内に定着します。さらに放置すると、角質増殖型水虫・爪水虫へ進行し、家族内、集団内へ菌を散布します。
足白癬は約5人に1人, 爪白癬は約10人に1人と推定されています。年齢は足、爪ともに40歳代から増えはじめ、70歳代になると50%にも達します。感染経路は、菌が感染した角層、爪、毛が環境中に飛び散り、間接的に皮膚へ付着し感染することが多いといわれています。従って感染予防のポイントは, 感染源としての水虫患者および患者から散布される菌のコントロールにあります。
水虫の第一次予防:水虫は40歳を過ぎると急激に増加します。原因は、長年に亘る革靴の着用、運動不足や肥満に伴う足のトラブルの増加、足の変形に伴う爪への負担、その他、糖尿病、喫煙、末梢循環不全などがあります。対策は、正しい歩行を心掛けること、正しい靴の選択、足は趾間を石鹸で丁寧に洗うことなどです。これは子供の頃から親が教育するべきことですが無視されているのが現状です。
水虫の第二次予防:水虫の早期発見と早期治療は大切ですが、実際は放置されているのが現状です。早期発見については、自分が水虫ではないか?と疑っているヒトは多いですが、症状が軽微なため放置したり、売薬でしのいでいたりします。水虫の急性期になると、耐えられなくなって医療機関を受診します。



司会(仲先生)
この講演会を通じて、皆様が皮膚についての正しい知識を少しでも多くお持ちいただけたものと思います。そして皮膚に何か異常を認めましたら、早めに皮膚科を受診していただきたいと思います。

スキンケア製品の展示と説明

講演の合間の休憩時間には協賛企業のスタッフからスキンケア製品の展示と説明があり、来場者の皆様は熱心に聞き入っていました。

また、今年はスキンケアサンプルのお土産を300個用意し,講演後にお持ち帰りいただきました。

今年は特に、去年、一昨年から2回、3回続けて来てくださるリピーターの市民のかたがたが多く、質疑応答も活発に行われました。アンケートでは90%の来場者が「満足」「ほぼ満足」と答えてくださり、非常に来場者の満足度の高い会となりました。
さいたま市民会館うらわでの開催にスタッフ共々慣れてきて効率的に会をすすめることができるようになりましたが、今後会場の老朽化にともない他に交通アクセスが良好で集客力のある会場を確保することが切実な問題となってきております。今後もこの市民公開講座を市民の皆さまが皮膚科の疾患への理解を深め、皮膚病の早期発見、早期治療に結び付けられるよう、スタッフ一同、レベルアップさせていきたいと考えております。

ご参加いただいた皆様方、本当にありがとうございました。

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