埼玉県皮膚科医会

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2017年「皮膚の日」市民公開講座のご報告

みんなで学ぼう!スキンケア−肌トラブルの原因は身近にある

2017年11月3日(金・祝日)に第8回「皮膚の日」市民公開講座を「さいたま市民会館うらわ」(さいたま市浦和区)で開催しました。昨年に引続き本年今年も好天に恵まれ、周囲には七五三で着飾ったお子様方が調宮神社へご家族と一緒にお参りに行く光景もちらほらみられました。237名というたくさんの皆様方にご来場いただき、大変盛況な会になりました。

 

お肌のトラブル相談

講演に先立ちまして、「お肌のトラブル相談」が特別ブースで行われ、11名の皮膚科医がご来場の皆様の肌・髪・爪等に関する疑問や質問を受けました。相談者は78人で、相談対象者は 82人(2歳~89歳)でした。相談内容としては湿疹・皮膚炎の他に、今回は処方された薬剤や、現在の主治医および地域の皮膚科医についての相談が多かったようです。

「開会の挨拶」

埼玉県皮膚科医会会長・仲皮フ科クリニック院長 仲 弥 先生

最近、秋が深まってきました。寒くなると風邪をひきやすくなります。風邪をひくとおそらく病院や薬局に行くでしょう。でも、もらった風邪薬を飲んだら、全身に赤い斑点が出たという方は珍しくありません。また、寒くなると、温かい肌着が欲しくなります。最近は肌着も進歩していて、着た瞬間に発熱してポカポカするという防寒肌着が流行っています。でも、その防寒下着が原因で皮膚が痒くなることがあるということ、ご存知でしょうか。このように皮膚病の原因が実は身近にあったということをよく経験します。今日は、この分野のエキスパートの先生がたにお話をしていただきます。きっと、みなさまのお役に立つ話が色々と聞けると思いますので、ぜひ日常のスキンケアの参考にしていただきたいと思います。

 

「見逃すと怖い薬疹~その皮膚の症状、原因は薬かも~」

埼玉医科大学総合医療センター皮膚科 教授 福田 知雄先生

 薬疹というと、通常は常用量あるいは常用量以下の薬剤の全身的投与により出現する各種の皮膚粘膜病変を指します。一般的には薬剤投与後に急性に現れ、投薬中止により比較的短期間で消失します。アレルギーないし中毒性機序によることが多いです。臨床症状は多彩で、播種状紅斑丘疹型、蕁麻疹型、紫斑型、間擦疹型、膿疱型、多形紅斑型などの他、重症型としてStevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)、薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)があります。特殊なものとして、薬剤に起因する光線過敏症と、一定の部位にのみ生じる固定薬疹があります。
診断を正しくつけるには、検査による確認が必要で、プリックテスト / スクラッチテスト、皮内テスト、パッチテスト、内服テスト、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)などを駆使して原因薬剤を特定していきます。薬疹は繰り返すことでより重症化していくことが多く、原因薬の特定は重症化を防ぐ意味でも重要です。
たかが薬疹と侮ることなかれ。最重症型とされるSJSおよびTENは、高熱とともに皮膚に紅斑と水疱・びらんを生じ、口唇・口腔粘膜、眼、肛囲・外陰部の皮膚粘膜移行部が障害されます。両者ともしばしば臓器障害を生じ、骨髄抑制による白血球減少、血小板減少、血管内凝固症候群、敗血症などを併発するとさらに重篤となり、TENではいまだに30%前後の高い死亡率が報告されています。重症例では視力障害、味覚障害などの後遺症が残ります。DIHSは、抗けいれん薬、痛風治療薬などの限られた薬剤により生じるウイルス再活性化を伴う重症薬疹です。多臓器障害や、長期的には膠原病などの自己免疫疾患を生じることもあります。SJS、TEN、DIHSでは早期診断が重要で、診断がつかず初期対応を間違えると死亡の確率が高くなります。
医薬品副作用被害救済制度は、医薬品を適正に使用したにも関わらず発生した副作用により重篤な(入院など)疾病や健康被害を受けた方の救済を目的とした公的制度で、医薬品の製造販売業者がその社会的責任に基づいて納付する拠出金によって賄われています。

Take-home messages;
①薬疹の臨床像は多彩なため、自己判断せず、皮疹が生じた場合は早めに皮膚科に相談すること。
②薬疹の検査は結構手間と時間がかかるが、薬疹において原因薬を特定することは重要。
③発熱、粘膜疹を伴う薬疹は重症薬疹の可能性があり、要注意
④薬による重篤な健康被害を受けられた方を救済する公的な制度として、医薬品副作用被害救済制度がある。

「防寒下着でかゆくなるって本当?~乾燥時期のスキンケアのコツ 」

独立行政法人国立病院機構埼玉病院皮膚科医長 中捨 克輝先生

 今回は秋から冬にかけて、肌が乾燥する時期によく見られる乾燥肌と湿疹、かゆみについてその原因と対策を、そして秋冬に広く着用されている防寒下着がかゆみを起こす事があることについて解説させていただきました。
本来、皮膚には角質と皮脂、天然の保湿因子が層状に重なることにより表皮の中に水分を保持して潤いを保つ巧妙な仕組みが作られています。しかし、乾燥する時期には水分が失われやすくなることに加え、高齢者の皮膚では皮脂などの保湿成分が減少したり皮膚が薄くなることによりさらに乾燥しやすくなります。肌が乾燥しやすくなる要因としては他に、未成熟な子供の肌や過度な冷暖房、ナイロンタオルや石けんの使いすぎなどがあります。
乾燥してバリア機能が低下した皮膚は外的な刺激に敏感になり、かゆみを起こしやすくなります。そこでかゆくて掻くという掻破行動が加わることにより皮膚はさらに傷がつき、その結果かゆみを感じる神経の線維が表皮の浅いところに伸びてきます。その結果肌はますますかゆみに敏感になり、かゆくて掻破行動が増え、さらにかゆみの原因が増え・・・という風に、いわゆるかゆみの悪循環が生じ、治療が必要な皮脂欠乏性湿疹になることになります。乾燥肌と湿疹の出来やすい部位はすね、腰周りが多いです。
乾燥肌とかゆみへの対策として、乾燥の原因に対する予防と、かゆみなどの症状に対する治療をご紹介します。まずは適切な保湿ケアです。保湿剤にはしっとりしやすい軟膏、クリームからさらっと塗りやすいローション、スプレー、お風呂のついでに効果が得られる入浴剤などがあり、肌の状態や塗り心地の好みで選んだものを肌が十分潤うまでしっかり回数を使うことが重要です。塗り方も肌に適量が均一に伸びるよう、塗る量と広さを工夫するとより効果が得られます。湿疹となった場合は炎症を抑える塗り薬、かゆみ止めの飲み薬などの治療もあるので、保湿だけでよくならない場合は皮膚科を受診するとよいでしょう。
近年量販店などでよく売られている防寒下着は保温と発汗で発熱する効果で広く使われるようになりましたが、用いられている化学繊維は肌に汗が残りやすく、ちくちくかゆい、冬でもあせものような湿疹が出るなど合わない人も多く見られます。汗をかきすぎるといわゆる汗冷えが起こりやすくなることにも注意が必要です。防寒下着は汗をかかないときに使う、刺激があるときはスキンケアをしっかり行う、下に速乾性の肌着を着るなど、上手に使う工夫が必要です。



司会(仲先生)
この講演会を通じて、皆様が皮膚についての正しい知識を少しでも多くお持ちいただけたものと思います。そして皮膚に何か異常を認めましたら、早めに皮膚科を受診していただきたいと思います。

スキンケア製品の展示と説明

講演の合間の休憩時間には協賛企業のスタッフからスキンケア製品の展示と説明があり、来場者の皆様は熱心に聞き入っていました。

また、今年はスキンケアサンプルのお土産を300個用意し,講演後にお持ち帰りいただきました。

最後に回収されたアンケートの結果、86%の方々より満足したとの答えをいただきました。また、不安に思っていることを分かりやすく聞けたとの声も多くいただきました。

ご参加いただいた皆様方、本当にありがとうございました。

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